スムースジャズ(フュージョン)の演奏を一般化するためのアイディア
60年代後半のジャズロック、70年代のクロスオーバー、80年代のフュージョン、90年代のスムースジャズ。
街では良く聴くのに演奏されることは少ないジャンルになっているようです。
ギターに限れば4ビートジャズより、ボサノバ以降のジャンルのほうが向いているのですが、現実世界ではどうでしょう。
ハウインセンシティブをやりたいんだけど。
ああいいよ。本に載ってるし。ボサノバね。
フィールソーグッドをやりたいんだけど。
えっ。どんな曲だっけ?譜面があっても無理かな。
という感じになるでしょう。
ジャズセッションなんだから、一般的な曲だけやれよ。迷惑だから。
口に出しては言わなくても、こう思っている方が多いと思います。
許されるのはボサノバの有名曲までで、それ以降の曲は却下される場合が多いようです。
まあ、10曲くらいはたまに演奏されるロック曲もありますが、初めての人とはやり辛いものです。
なぜでしょう?
ここでは60年代後半以降の曲で比較的ジャズ形態で演奏しやすいものをスムースジャズと定義して、その一般化への問題点と解決策を考えてみたいと思います。
目次
- 1、スタンダード化されていない状態では譜面があっても無理でしょう
- 2、スムースジャズのスタンダード化について
- 3、ジャムセッションの意識改革には良いかもしれません
- 4、その10曲とは?
- 5、ジャパフューは?
- 6、スムースジャズのスタンダード化のために必要な事
- 7、なぜ、無用のスムースジャズを勧めるのか
1、スタンダード化されていない状態では譜面があっても無理でしょう
プロレベルのホストバンドに初めて参加したギタリストが、パット・メセニーのサード・ワールドを希望したとします。
譜面を配ったとして、笑顔で応じてくれるでしょうか?
応じたとして、すぐに演奏を始められるでしょうか?
その曲の場合は、演奏したことのあるミュージシャンはほとんど居ないんではないでしょうか。
大ヒット作なので曲は聞いていてももう忘れている可能性が高いし。
もっと簡単な曲、例えばスティービー・ワンダーの「イズントシーラブリー」でも演奏経験が無ければ無理です。
2、スムースジャズのスタンダード化について
ジャズスタンダード集のような本を作って、200曲まとめたとしても難しいでしょう。
リズム隊は相当勉強しなくてはならなくなります。
ベースラインの重要性が増していて、譜面通りの音やリズムが要求されますし、ドラマーが練習しなければならないリズムパターンも膨大になります。
そうは言ってもスタンダード化しなくては何も始まりません。
曲数を減らして50曲でスムースジャズと言うジャンルをまとめるのはどうでしょうか?
3、ジャムセッションの意識改革には良いかもしれません
ベースパターンやドラムのリズムなどが記載されている厳選50曲のスムースジャズ集が一般化して、スタンダード集と共に必携になれば、多少時間がかかってもスムースジャズが普通に演奏される時代が来るかもです。
とは言っても、普通のジャズのジャムセッションで演奏される曲は充分の量がありますし、それが出来ないのに「スムースジャズを」と言っても理解されにくいですね。
なら、10曲に絞ったらどうでしょうか。
10曲なら、プロレベルの人達であれば、「まあやるか」って範囲ではあるでしょう。
プロレベルではない人であっても、いつもやっている曲が分かって譜面があれば練習したいと思うようになります。
「プロとか言ってたった10曲かよ」と言わずに、可能な曲数から意識改革していくべきでしょう。
ボサノバでさえ普通に演奏されている曲は10曲くらいですから。
4、その10曲とは?
選んだ意味がある曲にしたいですね。
つまり、スタンダードとは差別化できる曲です。
youtubeでヨーロッパのジャムセッションを見ていると、「ブリ―ジン」「イズントシーラブリー」が煩雑に演奏されています。
ベースとドラムの人は一曲ごとに練習しなくてはなりません。
「ドックオブザベイ」は現在の日本のセッションでも演奏されることがあります。
ポップスだと「マスカレード」「素顔のままで」「サンシャインオブマイライフ」「ヒューマンネイチャー」は定番ですが、現状では拒否される可能性もあります。
この辺は歌手が希望した場合は受け入れる可能性は高いですね。
フュージョン系ですと、
「ルーム335」「キャプテンカリブ」「バードランド」「モーニングダンス」「フィールソーグッド」「ハブユーハード」「アフターザラブハズゴーン」「セニョールマウス」「サムスカンクファンク」「ファットタイム」とか
それ以前の「スペイン」とか「ドルフィンダンス」も気軽にやって欲しいですね。
まあ、普通にやってますね。
5、ジャパフューは?
ややこしいですね。
妙に難しく造ってある曲が多いです。
「カリフォルニアシャワー」くらいでしょう。
6、スムースジャズのスタンダード化のために必要な事
納得できる選曲で正確な採譜の曲集です。
演奏しやすい上位10曲と詳しい説明付きで40曲で一冊くらいですね。
実際にその本で一般的なジャムセッション参加者が演奏できるのかどうか実験しなくてはなりません。
メロディ意外にベースラインとドラムパターン、ピアノリフ、ギターリフの提示が必要です。
初見で出来るのか、相当練習しないと無理なのかの説明が必要です。
それに近い本も出版されたことも多かったのですが定着しないのは、
本の費用が掛かる、練習が必要、曲を知らない、楽器が揃わない、店に合わない
などの原因があったと思います。
ブロードウェイの名曲と比べて見劣りするポップスも多いですし。
最大の原因は低レベル演奏家には厳しいと言うことでしょうね。
7、なぜ、無用のスムースジャズを勧めるのか
60年代後半からもう50年もたっていて、パブリックドメインになりかかっている曲もあるのに、演奏しないと言うのはもったいないからです。
音楽に入れ込んでも居ない人が、カラオケボックスで21世紀の高度な洋楽を軽々と歌っている場合さえあるのです。
確かにオータムンリーブスで素晴らしい演奏をするのは大変ですが、このままではクラシックより酷いことになります。
せめて70年代の「ブリ―ジン」とか「素顔のままで」とか「ダンスウイズミー」をスタンダードに入れて気軽に演奏できるようにするべきだと思うんです。
初心者のためとか言ってホストが演奏したくないだけと言う例も多いようです。
ジャズのクラシック化は避けられないにしても、せめてクラシック程度の進取性が欲しいなと思いつつ、今回はこのくらいで。
スムースジャズのスタンダード50曲選定は考えておきたいと思っています。
追記
パブリックドメインは作曲者が死亡してから50年ですからほとんどないですね。
ジミヘン死去後50年は近いですが。