【リズム・チェンジ】 ビバップジャズの魂に触れよう
ジャズの基本と言えば、ブルース、マイナーブルースとリズム・チェンジです。
日本の音楽学校などではブルースはともかく、リズムチェンジがないがしろにされてはいないでしょうか?
リズムチェンジの代わりに「枯葉」が推奨されていませんか?
学校の状況は良く知らないんですが、「枯葉」や「酒とバラの日々」は基本的なジャズ曲とは違うシャンソンや映画音楽です。
メロディを演奏することはとても重要なことですが、それ以上に重要なジャズの魂はリズムチェンジの進行の中にあります。
ベイシーのメンバーたちが主導したアメリカ中部のカンザスシティのジャムセッションでは夜な夜なリズムチェンジの演奏で技を競ったと言われています。
1930年代末期のカンザスのジャムセッションの様子は映画「バード」でも再現されました。
10代のチャーリー・パーカーが演奏した曲の進行はリズムチェンジのようです。
そして、もちろん1940年代初頭のニューヨークのジャムセッションでもリズムチェンジが主役です。
ブルースももちろんですが、頻度で言えばリズムチェンジのほうが多そうです。
それだけ、新しい(ビバップのこと)ジャズのエッセンスが出しやすい曲だったと言えると思います。
目次
- 1、リズムチェンジの原型
- 2、コード進行
- 3、テーマ
- 4、Aパートのアドリブ
- 5、ブルーノートの使用
- 6、リズム主体のフレージング
- 7、サビのフレージング
- 8、全体の構成
- 9、テンポについて
- 10、リズムチェンジはジャズの魂
1、リズムチェンジの原型
ジョージ・ガーシュイン作曲のアイ・ガット・リズムのコード進行が原型と言われています。
それで「リズムチェンジ」と言うんでしょうが、歌詞は32小節には収まりません。
34~36小節の曲です。
インストで演奏される場合は、Aパートはすべて8小節にまとめて、AABAで32小節になります。
2、コード進行
圧倒的にB♭keyが多いですが、別のkeyでのバップチューンも見受けられます。
ブルースと同様に12keyで練習する価値のあるコード進行です。
Aパート
|| B♭ G7 | Cm7 F7 | Dm7 G7 | Cm7 F7 |
|B♭7 | E♭7Edim| B♭ |(Cm7F7) ||
Bパート
|| D7 | | G7 | |
| C7 | | F7 | ||
Aパートのコルトレーンチェンジ
|| B♭ D♭7 | G♭ A7 | D F7 | B♭ F7 |
3、テーマ
「レスター・リープスイン」「レッドクロス」「アンソロポロジー」「ムーズザムーチ」「デクスタリティ」「アーリューチャ」「チェイシングザバード」「ショウナフ」「オレオ」「リズマニング」「52丁目のテーマ」「グッドバイト」他多数
サビのみ変形
「デイジー・アトモスフィア」
テーマが変形
「ソルトピーナッツ」
サビを借用
「スクラップル・フロム・ジ・アップル」
他にも多数あります。
サビを転調したⅡm7Ⅴ7Ⅰにチェンジした曲は他にも多いようです。
スクラップル・フロム・ジ・アップル」は「ハニーサックルローズ」のアタマ4小節との合体で人気曲です。
まずは基本コードチェンジのメロディを1~2曲覚えてブルースと共に演奏できるようにしましょう。
「アイガットリズム」でも良いです。
4、Aパートのアドリブ
テンポが速い場合が多いですが練習はゆっくり始めるのが普通です。
Aパートのコード分解はある程度練習しておかないと無理なものは無理です。
最初の2小節は偽終止ですので、フレーズ集に載っている循環ラインより、B♭一発と捉えて次の2小節につなぐのが一般的手法です。
次の2小節はブルースの頭と同様のアーメン進行です。Ⅰ→Ⅳ→Ⅰ→(Ⅴ)
前半4小節と後半4小節は別々に練習してから自在につなげたほうがいいでしょう。
前半4小節のアドリブ例
2小節にメモリーメロディ使用→Dm7D♭m7Cm7F7でフレーズ作成。
後半4小節のアドリブ例
B♭7ビバップスケールからE♭7E♭m7→B♭→Cm7F7
メモリーメロディはジャズチューン、ポップチューン。クラシック、童謡などの使用もありです。
後半のアーメン終止の部分はある程度似通ったラインでも問題ないです。
早いテンポの場合は、音数のコントロールが重要になる場合が多いですね。
パーカーやガレスピーは最初から全開ですが、普通は演奏するコーラス数を把握したうえでコーラスごとに密集度をコントロールします。
長い演奏が予測される場合は、Aパートにおいて「モノトニックスケール」の使用が効果を発揮するでしょう。
または、先に休符を考えてから演奏すると言う方法論もマスターしたい。
とりあえず、1コーラス目から全開は避ければ、コントロール可能な構成を作りやすいと思います。
エチュードとしてローワーストラクチャーテトラコードの基本形のみで。
シ♭ドレファソラ♭シレ|ドミ♭ファソファソラド|レファソラレ♭ファ♭ソ♭ラ♭|ドミ♭ファソファソラド|シ♭ドレファシ♭ドレファ|ミ♭ファソシ♭ミ♭ソ♭ラ♭シ♭|シ♭ドレファシ♭ドレファ|ドミ♭ファソファソラド|
これは機械的なものなので、音楽にするための工夫が必要です。
休符を使用して音列を整える。
逆行や展開形を使用して音型を作る。など。
5、ブルーノートの使用
Aパートにおいては非常に効果的です。
どこでも使用可能ですし、Aパートのほとんどをブルーノートで演奏している例もあります。
AパートをB♭ミクソリディアンモードと捉える場合もブルーノートスケールが主導的になりがちです。
リズムチェンジを題材にジャズヴォキャブラリーを学ぶ レッツプレイリズム(3CD付)
6、リズム主体のフレージング
八分音符の三連や五連の繰り返しなどを使用して盛り上げる方法が効果的です。
ブルーノートとの併用で安定的なサウンドが作り出せます。
ソロの構成を考えて使用するべきでしょう。
7、サビのフレージング
バンドが混乱しないように分かりやすい音を使うように心がけます。
Aパートはブルーノート主体、Bパートはドリアンスケールであれば非常に分かりやすく音楽的にも問題ありません。
しかし、ジャズの演奏と言うものは基本が出来ていると言うことを常にアピールする必要があります。
これをおろそかにすると、バックの人が適当なコードをやりだしたりするものです。
リズムチェンジのサビにおいて最もアピールするやり方は、D7にリディアン7thスケールを使用すると言うものです。
この場合は全音上のCkeyに転調したように見せかけられるので効果的です。
C7はⅡ7ですが、D7との差別化のためにリディアンサウンドは使わない場合が多いようです。
C7からF7に解決したところでいったん止めて、最後のAパートは独立させる場合が多いですね。
8、全体の構成
どちらかと言うと単純な進行ですので、コーラスごとのクライマックスがソロ全体の起承転結を作るように構成します。
本人がそう思っていてもメンバーや聞き手がそう思わない場合もありますので、アピールする方法は経験によって学ぶことになります。
ブルースに比べると要素が格段に増えて、難しさが増していますが、これがAABA進行の基礎になるのだと思います。
9、テンポについて
速いテンポは簡単ではありません。
ゆっくり練習することが正しい演奏への確実な道です。
ジャズはバラードからアップテンポまで曲想の幅が広い音楽です。
速い曲も地道な練習で辿り着くものだと思います。
10、リズムチェンジはジャズの魂
ブルースのアーメン進行を循環で囲んだソウルフルな進行はビバップ的なアップテンポに非常に合います。
循環はジャズの命ですが、ソロリストのコード分解は確率的です。
ガッチリとした進行を踏み台にジャンプすることがインプロヴィゼイションの肝なのです。
ちょっと予言しておきます。
50年後も最新鋭音楽は【ビバップジャズ】であると。
基本中の基本ですね。ボロボロになる前に買い替えましょう。
Charlie Parker Omnibook: For C Instruments. (Treble Clef Version)