ジャズアドリブ理論 リズムバランスの良いフレージングとは
アドリブフレーズの構築法としてリズムを先に決めて音を乗せるという方法があります。
一度音楽として完成されたものからリズムだけを採用して、理論的に音を乗せ換えて新しいラインを作ると言うやり方です。
メロディックリズムと言う名称もある理論です。
音楽において一番重要なものはリズムであり、それ以外の要素は二義的なものであると言う思想が現代では主流です。
でも、理解はしていてもなかなか実戦は出来ないものです。
あんまり関係ありませんが、コルトレーンとドルフィ「マイフェイバリットシングス」
目次
- 1、20世紀ポピュラー音楽のほとんどは四小節単位で出来ています。
- 2、普通の曲であれば4小節を最小単位として理解します。
- 3、先にリズムを決めた場合の即興メロディ
- 4、過去に使用されたリズムの転用
- 5、リズムフィギアの使用
- 6、タイムスピード
- 7、今回のまとめです
1、20世紀ポピュラー音楽のほとんどは四小節単位で出来ています。
ブルースでは8小節で1コーラスの形式も存在します。
20世紀前半では、12小節、16小節、24小節、32小節、36小節、48小節、64小節、などのダンスに適した分かりやすいコーラスがブロードウェイで多用されました。
踊らないとなれば何小節でも構わないと思いますが、4小節単位は基本です。
4小節から外れた部分はダンスでも決まった型になりやすく、即興音楽においても自由度が下がります。
21世紀に大興隆した第三世界向けに単純化されたヒップホップではさらに4小節が重要性を増しています。
2、普通の曲であれば4小節を最小単位として理解します。
特にジャズのアドリブのような即興性が高く、複雑なリズムやハーモニーを使用する場合は、4小節の区切りが表現できていないと混乱のもとになります。
例えば、「ハウハイザムーン」の最初の9小節ですが、
GM7 GM7 Gm7 C7
FM7 FM7 Fm7 B♭7
E♭7 ~
ですが、Gm7 C7 FM7 というⅡ-Ⅴ-Ⅰ を見つけたからと言って、本で覚えたⅡⅤフレーズを安易に使用したらどうなるでしょうか?
最初の4小節と2段目の4小節が繋がって、4小節単位で見た場合はバランスが悪くなります。
解決しているⅡⅤとはいっても、4小節の区切り線をまたいでいる場合は解決しないⅡⅤと考えたほうが良いのです。
3、先にリズムを決めた場合の即興メロディ
ソロを考えるにあたってリズムから入ると言うことは、使いやすい音に流されずに音楽性が先行しますので良い結果を招きます。
例えば4小節に対してバランスが良さそうな連符を想定します。
〇〇〇〇♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪〇〇〇〇〇
こんな感じだと、安定性が感じられると思います。
後半のⅡⅤは断ち切られて解決しないⅡⅤフレーズになります。
〇〇〇〇シレミファ♯ ラファ♯ソラシ♭シドド♯ レドシラシ♭レファソ ラレシ♭〇〇〇〇〇
など、考えてみてください。
フレージングには、伝統的なフレーズの知識が必要ですので、簡単ではないと言う意見もあります。
その通りだと思いますが、伝統と言うものは未来を縛り付けるものではないと考えています。
リズム面がしっかりとしていれば、伝統的ではない音使いでも理解を得られる可能性は高いものです。
テトラコードのみを使ったフレージング
〇〇〇〇ソラレシ ラシソレ「ミレラファ♯」 レドシ♭ソレドシ♭ソ 「ラシ♭ソ」
「」内はミドルストラクチャー
このような、一見イカさないラインでもリズム次第ではビバップスイングを得られる場合もあるのです。
4、過去に使用されたリズムの転用
チャーリーパーカーのオルニソロジーのリズムを見てみます。
♪ ♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪♪〇〇〇〇〇♪ ♪♪♪♪♪♪〇♪ 〇♪♪♪〇〇〇〇
音が伸びている部分も休符になっていますので調整が必要ですが、
トライアドでラインを作ってみます。
レ シレソシレソシレ ソレ〇〇〇〇〇レ シ♭レソシ♭レソ〇シ♭ 〇「ミド♯ラ」〇〇〇〇
「」内はアッパーストラクチャー
しかしこの曲はハウハイザムーンより頻度が高いので避けたほうがいいです。
さすがにアップテンポの曲にバラードのリズムなどは無理がありますが、可能なテンポであればどんな曲でも使用可能です。
Charlie Parker and Coleman Hawkins
5、リズムフィギアの使用
2拍で1音
♪〇〇〇 〇♪〇〇 〇〇♪〇 〇〇〇♪
2拍で2音
♪♪〇〇 ♪〇♪〇 ♪〇〇♪ 〇♪♪〇 〇♪〇♪ 〇〇♪♪
2拍で3音
♪♪♪〇 ♪♪〇♪ ♪〇♪♪ 〇♪♪♪
面倒くさがらずに考えられる限りのリズムを、可能なテンポやノリで練習することが自分のフィールの探求になります。
フィールとはリズムのことなのです。
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6、タイムスピード
1小節に対して、全音符、2分音符、4分音符、8分音符、16分音符、を基本に練習します。
連続して練習することによってタイム感の訓練になります。
それぞれ付点音符も追加します。
同時に休符の練習も行ってください。
3連や5連の練習も自分が納得するまで行うべきですね。
7、今回のまとめです
音楽において最も重要とされるリズムをテーマにした記事でした。
このブログ、70記事を超えて初めてリズムを本格的に題材にしたと言うのは、遅すぎて恥ずかしい限りです。
本来なら1記事めがリズムになるべきですが、それほどジャズに特化していなかったので遅れてしまいました。
リズムはフィールと言われるように人それぞれであり、訓練次第で誰でも個性的なノリを得られます。
しかし、訓練が足りないからと言って差別するような姿勢はよくありません。
環境や身体能力によって発達が遅れる人も居るのです。
諦めずに自分のペースでリズムを探求することによって誰でも自分だけのグッドフィールをつかむことが出来ます。
フィールとリズムの真の形とは、笑顔であると主張して締めとします。