ジェフ・ベック Jeff Beck ギター殺人者の凱旋
Jeff Beck - Blow by Blow (1975) FULL ALBUM Vinyl Rip
あらゆる分野での最大の成果を上げたギタリストは誰なのかは分かりませんが、あらゆる分野での最大のギターアルバムは決定しています。
ジャンゴ・ラインハルトでもアンドレアス・セゴビアでもチェット・アトキンスでもウェス・モンゴメリーでもありません。
ジェフ・ベックの「Blow by Blow」です。(たぶん)
活動歴55年以上という大ベテランですから、作品数も非常に多いのですが、それほど好不調の波が無いのはレジェンドならではでしょう。
代表作をざっと並べてみますと
第1期ジェフベックグループ
クリームとストーンズを足したようなブルース・ロックアルバム。
第2期ジェフベックグループ
- 『ラフ・アンド・レディ』 (1971)『ジェフ・ベック・グループ』 (1972)
マックス・ミドルトン(ピアノ)がサイドに入り、ソウルやR&Bやジャズっぽいサウンドになった。
ベック・ボガート・アンド・アピス
- 『ベック・ボガート・アンド・アピス』(1973)『ベック・ボガート・アンド・アピス・ライヴ』 (1973)
親友のジミー・ペイジの成功を意識したのかハードロック調のサウンド。
と、2枚のアルバムずつで物議をかもしました。
ジェフ・ベック(ソロ)
- 『ブロウ・バイ・ブロウ』 (1975)
- 『ワイアード』 (1976)
- 『ライヴ・ワイアー』 (1977)
- 『ゼア・アンド・バック』 (1980)
- 1974年にはBBAは解散(喧嘩別れとか)となり、ジェフ・ベックは新境地を模索します。
- モデルにしたのは、マイルスバンドのギタリスト「ジョン・マクラフリン」率いる「マハビシュヌ・オーケストラ」だそうです。
マハビシュヌも手掛けたジョージ・マーティンにプロデュースを依頼し、キーボードにはマックス・ミドルトンという布陣で世紀の名作は録音されました。
あまりにも素晴らしい作品なので一曲ずつのレビューを
- Side 1
- 分かってくれるかい - You Know What I Mean (Beck, Middleton) 4:05
4~5本のギターのオーバーダブによるファンキーなインストロック。
ロックギター奏法のお手本として現代も古びることは無い。
2. シーズ・ア・ウーマン - She's a Woman (Lennon-McCartney) 4:31
ボコーダー(?)を使った歌が入る、ビートルズ・ナンバー。
ジェフ・ベック特有のナチュラルな音色のポップなギターソロは、ハイテクと言える。
3. コンスティペイテッド・ダック - Constipated Duck (Beck) 2:48
ノリノリのナンバー。短いが印象的なソロはさすが。
4. エアー・ブロワー - Air Blower (Bailey, Beck, Chen, Middleton)
ファンキーなリズムにベックのファズギターが躍動する。マックスの幻想的なエレピソロから一転してスローテンポでギターとエレピが掛け合う。
5. スキャッターブレイン - Scatterbrain (Beck, Middleton) 5:39
ジョン・マクラフリンをイメージした曲らしい。テーマで複雑なコード進行を示し、アドリブはロマンを感じさせる。
- Side 2
1. 哀しみの恋人達 - Cause We've Ended as Lovers (Wonder) 5:42
スティービー・ワンダー作曲(原曲は知らない)。ジェフ・ベックがロイ・ブキャナンに捧げて演奏したものだそうです。完全コピー必須の名曲
2. セロニアス - Thelonius (Wonder) 3:16
これもスティービー・ワンダーの曲ですね、ジャズピアニストのセロニアス・モンクにささげた曲でしょうか?ファンキーなリズムとボコーダーのスキャットが聴きどころです。
3. フリーウェイ・ジャム - Freeway Jam (Middleton) 4:58
シャッフルリズムの快調なナンバー。このイントロ、しびれますね。
ベックならではのアーミングのソロが見事です。細かい技もさえています。
4. ダイヤモンド・ダスト - Diamond Dust (Holland) 8:26
アルバムのラストを飾るバラードナンバー。朝焼けをイメージさせる浮遊感のあるメロディです。複雑なコード進行ですがベック節でロマンあふれるアドリブを聞かせます。
Blow by Blow (Guitar Recorded Versions)
この作品は500回近く聞いたと思います。
エレクトリックギターの可能性を世界に示した最高傑作だといまだに信じています。
ところで「ギター殺人者の凱旋」って日本語タイトルには英語表記もあったんですね。(驚き) The Return of Axe Murderer
- 『ワイアード』 (1976)
翌年の完全インスト作品。マハビシュヌ・オーケストラのキーボードプレイヤー「ヤン・ハマー」が参加。
前作ほどでは無いにしても、素晴らしい出来。ベックは少し緊張が解けたような演奏。
Jeff Beck/ Wired (Guitar Recorded Versions)
- 『ライヴ・ワイアー』 (1977)
ヤン・ハマーのバンドにベックが参加したライブ。ベックのナンバーでまとめられている。
- 『ゼア・アンド・バック』 (1980)
ワイアードから少し空いたため印象が変わっている。1975当時と違いフュージョンミュージックと言うジャンルが確立したため自信を持った作風になった。スペーシーな曲が多い。
これでやっと1/3、まだ38年あるんですね。凄い!
この後、ベックはさらに前へと進んでいき、私はあいも変わらず70年代作品を聴いているのでした。
個人的にはピック弾きのベックのほうが好きなのですが、いつの時代でも前向きな姿勢は認めないわけにはいきませんね。
「ギターショップ」あたりは同様の路線なので問題はありません。
今回は仕事中にトゥルースからゼア・アンド・バックまで一気に聴いたのでついその気になってしまいました。
1975年と言うとマクラフリンやコリエルだけでなく、アメリカのフュージョンギタリストが一斉に蜂起した時期です。
その先陣を切ったばかりでなく、今聞いても最も優れた作品を造りだしたジェフ・ベックには畏敬の念しか起こりません。
Jeff Beck: Best of Beck (Guitar Recorded Versions)