11音スケールは量子力学的音楽理論 【シュレーディンガーの猫】
ターゲットノート理論
インプロヴァイザーの思考の流れにおいて、インサイドまたはアウトサイドの、2小節目の音が設定されていたとしても、1小節目の音は誰も知ることは出来ない。これを私は11音スケール理論と呼びます。
可能な音は11音では無いのです。12音です。
しかし、そのうちの1音が既に設定されていることから、解決する音への投影と考え、いくつの音を使ったとしても11音と考えます。
これは一般的にはターゲットノート理論と呼ばれるものです。
さらに、解決する音の調性を最大限尊重した音列についてはアプローチノートと呼ばれますが、ここでは同一理論上のものとします。
例えば、C△7コード上で レ♯→ミ と演奏したとします。
この理論ではレ♯はミ以外の11音から選ばれた音です。
クロマチック・アプローチとは11音スケールの一つの在り方であり、ミ→レ♯であればアウトサイドになります。
11音から選ばれたのはミの方です。
と言うことですが、音楽的であるためにはインサイドの可能性を追求した上で少しだけアウトサイドを、と言う考え方が妥当です。
ターゲットとなる音が決まっていても、そこに至るラインはその瞬間まで演奏家自身も知らないと言うことから【シュレーディンガーの猫】という言葉を当てたのです。
演奏中にターゲット・ノートの変更もあり得ます。
目次
1、ワンノート・アプローチ
アプローチ・ノートがひとつ、ターゲット・ノートがひとつの2音ラインです。
オン・ザ・ビート・ターゲット・ノートとは、ターゲット・ノートが拍のアタマに位置するもの。
オフ・ザ・ビート・ターゲット・ノートとはターゲット・ノートが拍のウラに位置するもの。
やって見ればわかりますが相当印象が変わりますので練習の価値があります。
クロマチック・アプローチとスケール・ステップ・アプローチがありますがクロマチックもスケールなので厳密には同じです。
クロマチックアプローチ ファ♯ → ソ
ダイアトニックアプローチ ファ → ソ
ペンタトニックアプローチ ミ → ソ
アプローチノートを連続させることによって、スケールとは違うラインを作ることが可能になります。
(例 トライアドに対して
①シドレ♯ミファ♯ソシドレ♯ミ~
②シドファ♯ソレ♯ミシドファ♯ソ~
(例 テトラコードに対して
①シドド♯レレ♯ミファ♯ソシド
②シドファ♯ソレ♯ミド♯レシド
The Pat Metheny Real Book: C Instruments: Artist Edition (The Real Book)
2、ツーノート・アプローチ
上または下からのダブルアプローチと上下からの挟むアプローチがあります。
挟むアプローチ
上下からダイアトニックアプローチ
①レシド・ファレミ・ラファソ
②シレド・レファミ・ファラソ
上からダイアトニックステップ、下からクロマチック
①レシド・ファレ♯ミ・ラファ♯ソ
②シレド・レ♯ファミ・ファ♯ラソ
上からクロマチックアプローチ。下からダイアトニックアプローチ
①レ♭シド・ファレミ・ラ♭ファソ
②シレ♭ド・レファミ・ファラ♭ソ
上下からクロマチックアプローチ
①レ♭シド・ファレ♯ミ・ラ♭ファ♯ソ
②シレ♭ド・レ♯ファミ・ファ♯ラ♭ソ
2音で挟むラインを連結した場合もスケールラインとは異質のラインを作れます。
(例
Dm7で1,3,5,7,9.11.13、をターゲットに2音で挟むラインを連結。
下からクロマチック、上からダイアトニック
ド♯ミレミ・ソファソ♯シ・ラソレド・レ♯ファミファ♯・ラソラ♯ド・シ
片側からのダブルアプローチ
ダブル・クロマチック・アプローチとダブル・スケール・ステップ・アプローチ、さらに混ぜたものが考えられます。
複雑になり過ぎると音楽的でなくなる可能性があります。
上と同様にDm7の1,3,5,7,9,11,13、に上からのダブル・クロマチック・アプローチ・ライン。
ミミ♭レソ・ソ♭ファシシ♭・ラレレ♭ド・ファ♯ファミラ・ラ♭ソド♯ド・シ
どのラインもオンビートとオフビートを考えることによってさらに音楽的になります。
3、スリーノート・アプローチ
普通に聞こえるものは、片側からダブル・クロマチック、反対側からスケール・ステップ・アプローチです。
ドに対して上からダブルクロマチック、下からスケール レレ♭シド
Dm7の13,11,9,7,5,3,1、に対して下からダブル・クロマチック、上からスケール・ステップ・アプローチ
ララ♯ドシ・ファファ♯ラソ・レレ♯ファミ・ラ♯シレド・ソソ♯シラ・レ♯ミソファ・ドド♯ミレ
Dm7の1,3,5,7,9,11,13、に上からダブルクロマチック、下からクロマチック。
ミミ♭ド♯レ・ソソ♭ミファ・シシ♭ソ♯ラ・レレ♭シド・ファ♯ファレ♯ミ・ララ♭ファ♯ソ・ド♯ドラ♯シ
スリーノートアプローチはターゲットノートをオンビートにするために裏から始めると分かりやすいラインになります。
これらのラインはどの方法を使うか、どこで止めるのかを演奏家も不確定的な場合が多いため【シュレーディンガーの猫】奏法と呼んだのです。
Pat Metheny Guitar Etudes: Warmup Exercises for Guitar
4、フォーノート・アプローチ
クロマチックとスケールアプローチを組み合わせます。
ターゲットノートと合わせて5音になるため、リズムフィギアの使用が必要かも知れません。
ダブルクロマチックアプローチは最初の音がコードのカラーを阻害する場合は変更したほうが良い場合があります。
(例 C△7の△7thに上からダブルクロマチックはC♯音から始まるため厳しい。⇒レドシに変更すれば調和する。
ドに上下からダブルクロマチックアプローチ レレ♭シ♭シ・ド
G7においてシに対して上からスケール、下からダブルクロマチックアプローチ、これは非常に煩雑に使われます。
レドララ♯・シ~この後ディミニッシュラインになることが多い。
4音ではあるが同一音があるラインも煩雑に使われれます。
シ♭シレド・シ または シ♭シレシ・ド
5、コンスタント・ストラクチャー
フォーノートでターゲットを包みつつ近づくライン
(例 レシ♭レ♭シ・ド シソシ♭ソ♯・ラ
コンスタント・ストラクチャーでラインを作ることも可能ですが、クロマチックに固執した場合は、相当外れた印象のラインになります。
6、ファイブノート・アプローチ
上下から、さらに同一音も含むことによって滑らかなラインも可能です。
ドをターゲットに シ♭シレレ♭・シド
コードトーンに対して連続したラインを考えれば、スケールとは全く違う予想外のラインの創作が可能になります。
(例
レシレシ・レド
レ♯ファファ♯ファ・レ♯ミ
ミミ♭レド・ラ♯シ
7、ターゲッティング理論
拡張されたアプローチラインが比較的長時間流れたのちにターゲットノートに着地する方法論。
コードとの摩擦はスピード感で最小限にされている場合が多い。
アウトサイドとは違った観点から、コードを気にしない自由なラインを作ることが出来る。
インサイドから見たら執行猶予を与えているようなイメージなのでベストな音に着地することが望まれる。
パット・メセニーの提唱が有名ですが、それ以前にハービー・ハンコックやマイケル・ブレッカーなどのスピーディーなプレイヤーが実験を行っていました。
これがゆっくりと行われるとアウトサイドなのかどうかは、たぶんまだ答えは出ていないと思います。
ターゲットノートに着地することを前提に自由な音を自在に使いまくると言う考えは夢があるのですが、自由のつもりが手癖に陥っている例も聞きます。
素晴らしい理想ですが相当難しいことは間違いないと思います。
最近のジャズプレーヤーのアドリブを聴くと、短い時間で使用している人が多いようです。
夢があるように見えましたが、ビバップの広大な海の中に飲み込まれたように感じました。
Pat Metheny: What's It All About (Guitar Recorded Versions)