ポピュラーソロギターの聖典 竹内永和編曲集
今日は日本人ギター編曲家兼クラシックギタリスト「竹内永和」さんのお話です。
目次
1、おそらく無名なギタリスト竹内永和とは
初著作と思われる「ポピュラーギター名曲集 Ⅰ 」の初版は1988年ですので、そんなに古い人では無いですし、現役ギタリストでもあります。
現在は洗足学園音楽大学でワールドミュージック講師を担当しているようです。
私が相当若いころ(10代)に買ったのがこのポピュラーギター名曲集のⅠとⅡだったんですが、その後出る都度に買い続け、たぶん竹内さんの著書はすべてあると思います。
1955年生まれとあるので、現在63歳くらい、Ⅰの出版時は33歳くらいでしょうか。
その序文にはこうあります
自宅でくつろぎながら、映画音楽やポピュラーのヒット・ナンバーをつまびく、というのはギター愛好家に許されたぜいたくな楽しみの一つでしょう。居ながらにしてファンタジーの世界やラブ・ストーリーの世界にトリップできるって、とってもステキなことですよね。
その通りの編曲活動で、ポピュラーギター7巻、映画音楽3巻、南米音楽1巻を出版し、さらに日本人の楽曲の編曲集、松任谷由実2巻、サザンオールスターズ1巻も手掛けています。
他に10数巻あるJ・ポップ集の1/5くらいの編曲もあります。
ここまでは、現代ギター社からの本ですが、その後ギタードリームと言うナイロン弦ギターの雑誌を手掛け(一時期は社長だったようですが)、連載として月1~2曲を掲載していました。
ギタードリーム廃刊後は現代ギターにも多少寄稿するようになりましたが、現在は演奏活動と洗足大学の講師業が中心のようです。
2、その編曲の特徴は
ポピュラーソングの原曲アレンジに忠実でいながら、やや薄い和音をセンス良く無駄のないアレンジは当時の若いアマチュアクラシックギタリストを虜にしたのですが、クラギ講師のあいだでは評判がよくないような気もします。
次から次へと登場する新アレンジに対処できないと言うのが本音でしょう。
質の悪い講師に当たると、何が何でもカルカッシop60やって、アルハンブラの思い出が出来ないなら見込み無しとか、金だけとってまともに弾けないうちに追っ払うと言うのがありがちで、現在でも非常に多いようです。
クラシックのエチュードと言うものは単なる曲であって、練習になるとかならないとか以前に、聞き手の前で弾いて聴かせるのが目的のものです。
ショパンの革命や別れの曲などもエチュードであり堂々たる名曲です。
ギターのエチュードでピアのエチュードに匹敵する曲はありませんし、19世紀以前のものは現代のギターは違う楽器、いわゆる「19世紀ギター」で、演奏法も現代とは違うものだったのです。
カルカッシやソルやカル―リの価値は残念ながら現代でも通用するものではありません。
ギター講師の飯のタネになっているだけです。
クラシックギターの勉強であればタレガ以降のエチュードを使うべきでありますし、竹内アレンジの大量の曲もその候補です。
3、これから聴いてみたいと言う人には
譜面はあっても習うという行為は厳しいものがあるようなので、youtubeの演奏を参考にすることになります。
基本は原曲を聴きこんで編曲譜に取り組むイメージとするべきなんですが、なかなか難しいものです。本人の演奏がほとんど見当たらないので。
ギタードリームでは本人演奏のCDがついていたので手に入るのならそれが一番です。
youtubeではここ5年くらいで大量に挙げられています。
特に北欧ロシア系のギタリストの演奏は質が高いです。
竹内アレンジを専門に演奏したチャンネルもあるようです。
イョラン・セルシェルを始めとして外人による演奏が多いようですが、日本人プロによる録音は知りません。
4、その著作物の価値
実は私は「ポピュラーギター名曲集」を始めとした竹内氏の著作で、境界の無い世界の音楽を知りました。
60~90年代のロックポップス、20世紀全般に渡る映画音楽、南米の音楽、フランスのシャンソン、クラシックの印象的なメロディの編曲、ブロードウェイのミュージカル、ソウルディスコなどの黒人音楽、日本のフォーク、ニューミュージックなどです。
特徴としては編曲のやり直しと言うものがほとんど無く、初版の段階で完成しているということでしょう。
編曲を変えさせず、版を繰り返すと言うのは現代ギター社の特色でもありましたが、ころころ変えていく編曲家よりは安心して取り組めます。
現代ギター社とは編曲料の支払いなどでトラブルが起き、再版されずアマゾンなどでは万超えの中古が多かったんですが、ここ数年に少しずつ再版されているようです。
編曲の素晴らしさもさることながら、20世紀ポピュラー音楽の研究書としても貴重な著作物です。
5、どのように勉強するべきか
日本人ギタリストとしては四国在住の青木一男さんが大量にyoutubeに挙げています。
ちなみに、横須賀在住の石田忠さんは江部賢一編曲のものですので聞き比べるのもいいでしょう。
竹内アレンジは隙間が多く、ジャズ系や南米系の音楽に詳しい人にはさらに価値があるでしょう。
ジョーパスコピーは無理でも、竹内アレンジにジョーパスのフレーズを挿入するのは簡単です。
クラシックギターの講師の人たちも、曲だか何だか分からない音の羅列より、こういった美しいメロディのアレンジをエチュードに取り入れてほしいですねえ。
竹内永和さんは日本人の宝です。いつまでも元気に活躍してもらいたいと祈っております。
追記
せどりの法外な値段に手を出す前にネットで探してみてください。
もしかしたら・・・・w