小野リサのライブに行ってきました ブルーノート東京
青山に行くのは久しぶり。ジョイスのライブ以来かな。
ワールドミュージック系のアーティストとしては日本で最も勢いのある小野リサのコンサートに行ってきました。
ここだけの話ですが座席が狭い会場は嫌いなのです。エコノミークラス症候群になりそうでw
今回は小野リサの最高作と名高い「ボッサ・カリオカ」の双頭リーダーと言ってもいい「パウロ・ジョビン」とその息子「ダニエル・ジョビン」がバックを務めてました。
で、観たかったのは「アントニオ・カルロス・ジョビン」の息子のパウロです。今回初めて見ました。
パウロ・ジョビンは1950年生まれの67歳、小野リサより12歳年上です。
幼少より父の影響でギターの訓練を行い、ある時点ではジョビンはギターを弾くことをやめてしまい、完全に息子に任せてしまったほどの上達でした。
ボサノバ史に残る名曲を数曲作曲したことも重要です。ソーホーのサンバ、サッシなど。
小野リサの父親が経営していたこともある四谷のブラジル音楽専門ライブハウスが「サッシ・ぺレレ」(サッシ曲中に登場する一本足の黒人のおばけ)なので、小野リサにとっては兄のような存在ではなかったかと想像します。
今回はパウロの人となりとその演奏がお目当てだったんですが、思ったよりお年だったことと地味な外見に拍子抜けしました。
大変失礼ですが、スター性とは程遠い人だったようです。
稀代の大作曲家の息子であり、そのバンドのギタリストでありながらプロを志向せず設計技師として家族を養っていた人です。
しかしです、そのギターの腕前は通だけが知る本格的なものです。
今回のライブではミスが多かったんですが、にもかかわらず音もリズムも、そのたたずまいもボサノバそのものと言う文化財とも言えそうな人物でした。
DVDに残っている「ジョビンコンサート」(死亡直前のものでジョビンはラストしか登場しない)でも、荒れ狂うハービー・ハンコックを相手に静かに力強くブラジルのリズムを刻み続けた姿は目に刻み込まれました。
アストラッド・ジルベルトの中期の名作「アストラッド・プラス」(パウロのサッシ含む)ではギタリスト兼作曲家兼プロデューサーとしての実力を見せました。
小野リサとの共演アルバムは「ボッサ・カリオカ」「ミュージック・オブ・アントニオ・カルロス・ジョビン」「ブラジル」と言うことになりますが・・・
小野リサってパウロが居ないときは真面目にボサノバやってないんじゃ・・・
まあ、ドリバル・カイミとの秀作もありますが。
基本、小野リサは日本人がバックの時はワールドミュージックの歌手になります。
そんなこともあって、パウロはジョアン・ジルベルトに続くボサノバの無形文化財と言考えてもいいんじゃないかと思います。
で・・・その息子のダニエルですが。
リオデジャネイロ・オリンピックの開会式でピアノの弾き語り「イパネマの娘」をソロ演奏した人です。バックには祖父の巨大な映像が。
彼はプロなんでしょうか。ショーマン・シップはありますね。
三代目ですから何かプラスアルファが必要なんでしょうが、今回は単なるジョビンの再現以外の何物でもありませんでした。
パウロ親子は文化財と言うべき最後のボサノバ具現者なんでしょうが、スター(今回は小野リサ)の伴奏専門ユニットの価値だけのように見えました。
ボサノバにまじめに取り組む人がいれば完璧なリズムで伴奏すると言う姿勢は、まさに必要とされているものでしょう。
坂本龍一のボサノバ連作の第一作もパウロのファミリーがバックアップしています。
ジョビン(ピアノ)→パウロ(ギター)→ダニエル(ピアノ)
これは尽きることのない「黄金の歳月」(ジョビン作曲のタイトル)、味わい深いリズムの連鎖です。
買って損はないCDってそんなに多くは無いですよね。日本人がリーダーでこれほどの作品は奇跡に近いと思います。
The music of Antonio Carlos Jobim "IPANEMA"
ザ・ミュージック・オブ・アントニオ・カルロス・ジョビン イパネマ [ 小野リサ ]