ディミニッシュ 4トニックのシンメトリックスケール
20世紀の音楽理論を席巻したかのようなディミニッシュ・スケール理論の考察です。
ディミニッシュは1オクターブを4等分した短三度音程の4音を基本としたスケールです。
デュークエリントンが好んで使用したことは知っているのですが、考案者などは分かりません。
分かり次第補足します。
目次
- 1、ディミニッシュ・スケールの概要
- 2、コードを連結するディミニッシュ
- 3、ディミニッシュの直線的なライン
- 4、ディミニッシュは存在そのものが4トニックシステムである
- 5、ディミニッシュのへキサト二クス
- 6、ディミニッシュのテトラコード
- 7、ディミニッシュ・スケールを利用してⅡⅤ-Ⅰフレーズを組み立てる
- 8、インサイド・ラインの中にディミニッシュ・スケールを組み込む
- 9、ダブルディミニッシュ
- 10、コンビネーション・ディミニッシュ
- 11、ディミニッシュアプローチ
- 12、まとめ
1、ディミニッシュ・スケールの概要
このスケールの可能性を探ると
C7(♭9)に対して、C♯ディミニッシュを想定します。
1、レ♭
2、レ♭ ソ
3、レ♭ ミ ソ
4、レ♭ ミ ソ シ♭
5、ド レ♭ ミ ソ シ♭ または ド レ♭ ミ ソ ラ
6、ド レ♭ ミ ソ ラ シ♭
7、ド レ♭ ミ ファ♯ ソ ラ シ♭ (リディアン7th♭2)
8、ド レ♭ ミ♭ ミ ファ♯ ソ ラ シ♭
という感じです。
今回除外した音は、レ、ファ、ソ♯、シ の4つで、これはアウトサイド
のディミニッシュですが、C7(♭9)から見てアウトサイドではない音があります。
5、は流れで行けば、ドレ♭ミソシ♭ ですが、ペンタトニック・スケールから出来る♭9スケールは ドレ♭ミソラ です。
実際は8音ディミニッシュのどの音を選んでスケールを作っても機能しますので、この表はそれほど意味がないようです。
二つの減五度を持つ4音ディミニッシュ レ♭、ファ♯、ソ、ド と言うスケールも近年頻繁に使用されています。
4、の レ♭、ミ、ソ、シ♭ はディミニッシュコードの構成音なので基本とは言えるでしょう。
もしも、ディミニッシュスケールは難しいと感じている人がいるとしたら、最初から一番多い8音階を基本としているのではないでしょうか。
上記の表の音数が少ないものからマスターしていけば意外に簡単に身につきますよ。
2、コードを連結するディミニッシュ
ディミニッシュ・コードを7thコードの代用として使用するとベースなどいくつかの音が半音進行するため好んで使用されます。
上がるディミニッシュ
解決先のコードの半音下の音を持つディミニッシュは必ずドミナント7thの機能を持ちます。
(例1 C♯dim7 → Dm7 = A7♭9 → Dm7
(例2 C♯dim7 → D△7 = A7♭9 → D△7
上の例に6音スケールを使用 ドド♯ミソシ♭ドラソ ファ(ファ♯)
下がるディミニッシュ
全音間隔で下がるコードを連結
(例 Am7 → A♭dim7 → Gm7
この場合、A♭dim7はAm7のドミナント機能を持ちます。
A♭dim7まではAm7のサウンドであると言う考え方が一般的で、Am7のドミナントのスケールが使用されます。
3、ディミニッシュの直線的なライン
それぞれのディミニッシュ・スケールの直線的ラインは有効なフレーズになります。
解決のタイミングを見極めて始めるのが良いと思いますが、どちらかが小節線をまたいでも構わないと思います。
スケールパターンの使用も良く見られます。
4、ディミニッシュは存在そのものが4トニックシステムである
基本音列 レ♭ミソシ♭ を短三度移動した場合、音の順番が変わるだけで4つの音に変更は起こらない。
8音のドレ♭ミ♭ミファ♯ソラシ♭でも同様となります。
短三度の音列は非常に耳障りが良いのですが、やや攻撃的なサウンドを作るために8音の中の全音を使用したラインを短三度移動する例が多いようです。
C7(♭9)に対して
ドシ♭ファ♯ミ という全音二つのラインを短三度移動させる。
レ♭ミドシ♭ という短三度と全音をミックスしたラインを短三度移動。
5、ディミニッシュのへキサト二クス
ヘクサト二クスの項で書いたように、ディミニッシュ・トライアドを連結できます。
減五度関係のメジャーまたはマイナー・トライアドの連結は2トニックですが、4トニックであるディミニッシュと同様の機能を持ちます。
減五度の2トニックシステムはビバップ音楽革命の中枢でしたが、ディミニッシュは2つの減五度を持ちます。
6、ディミニッシュのテトラコード
C△ (♭2) の4音 ドレ♭ミソ はディミニッシュの要件を満たしていますので、仲間として使用できます。
その際はテトラコードのパーミュテーションや五度上げが利用できます。
7、ディミニッシュ・スケールを利用してⅡⅤ-Ⅰフレーズを組み立てる
メジャーkey、マイナーkey共に最も有効なドミナント・ラインになります。
センスの見せ所です。
8、インサイド・ラインの中にディミニッシュ・スケールを組み込む
ドミナント・アプローチでは非常になめらかで刺激的なサウンドを演出します。
アプローチではない一時的なアウトにも非常に有効です。
スーパー・インポーズと呼ばれる手法でもディミニッシュ・スケールは花形だと思います。
9、ダブルディミニッシュ
4音のディミニッシュは全部で3つですが、うち一つはテンションとして内包できます。
テンションでは無い方と組ませた場合はサウンドが進行します。
8音のディミニッシュの場合は残りの2つがアウトサイドになります。
このうち二つを演奏することを指しますが、4音が重複し、4音が新たに追加されることによって12音になります。
12音を8音二つに分けて同時に考えると言うことは、有効性を見出すのが難しいでしょう。
モード曲でダブルアプローチ的に使用している例は聞いたことがあります。(アルトサックス奏者)
10、コンビネーション・ディミニッシュ
C7(♭9)に使用するCがルートのディミニッシュとして、C♯ディミニッシュをCコンビネーション・ディミニッシュと呼びます。
私はこの名称を使用しませんので一番最後に来ました。
展開形に名前を付けるのは好きではないと言うのが理由ですが、ディミニッシュの場合は展開形が一つしかないので、この名称は使いやすいと思います。
音も使用方法も同じです。
11、ディミニッシュアプローチ
メロディがコードの2、4、△7、の場合はディミニッシュでハーモナイズできます。
拡張としてトニックコードでディミニッシュ・スケールでフレージング出来ます。
Cに対してドミ♭ソ♭ラですが、その半音下のシレファラ♭がテンションになります。
ブルーノートへのアプローチフレーズとしてチャーリー・パーカーが煩雑に使用。
12、まとめ
単独のスケールとしては最も刺激的で使用頻度も高い便利なツールです。
シンメトリック・スケールとしては最も構造的で、すべての曲に自然に溶け込むサウンドを持っていると思いました。
今回ほとんど取り上げなかった、レ♭ファ♯ソド の4音スケールはディミニッシュとしてだけではない可能性を持っているらしいのですが、理解できない部分があったのでまたの機会にしました。
ディミニッシュとして使う分には問題ありません。
ディミニッシュは8音を基本と考えてどの音を選んでスケールを作っても良いので面白い可能性があるかもしれません。
ディミニッシュ・ペンタトニックでペンタトニック・スケールパターンの使用は目からうろこ状態でしたし。
もしも避けていた人は、ぜひともディミニッシュ・マニアになっていただきたい素敵な理論でした。