ダイアトニックスケール 意図せずサウンドが変わる危険性
皆さんは最初に7音階を覚えたでしょうか?
五線譜に音符を順番に並べると8個目で最初の音の1オクターブ上になりますので、五線譜を基礎とした楽器習得であれば普通の流れでしょう。
ところが、
五線譜を使わず楽器を習得するタイプの音楽家の多くは7音階を使用しません。
民族音楽やブルース(これも民族音楽かな)、ビバップまでのジャズもそうです。
もちろん、20世紀半ばにはほとんどの国で音楽教育の情報が行き届き、
7音階を知らない音楽家なんてほとんど居なかったのですが。
今回の題材になるダイアトニックスケールとは、1オクターブ7音階の中でもバランスの良い音階のことを指します。
バランスの悪い7音階はダイアトニックスケールとは呼びません。
1、ボクが考えた最強の7音階
12半音で7音階なので、全音と半音だけで出来た音階が最もバランスが良いでしょう。
適当に名前を付けて見ると
ドリアンスケール 全半全全全半全
ドリアン△7thスケール 全半全全全全半
半音が続くようなバランスが悪いものは採用しないとすると、この二つしかありません。
西洋音楽の無駄な知識を排除してすっきりまとめるとこうなります。
なんだか簡単そうじゃないですか?
パット・マルティーノのマイナー・コンバージョンですね。
迷走した7音階理論の本質はマイナー・コンバージョンなのです。
私がまとめた1~12音のスケール表の7音の段にはこの二つのスケールと変化スケールが入ります。
2、一般的な7音階とは
さて、なぜ7音階理論は迷走したのでしょうか?
答えは簡単。
五線譜と、それをもとに構成された鍵盤が原因です。
白鍵至上主義と言いましょうか、白鍵だけの可能性を探り過ぎたのが原因ではと思っているのです。
黒鍵は何のためにあるのかと言いますと、歌手の音域に合わせるためですね。
音楽の歴史は数千年ですが、録音機材が発明される前のもので残っているのは五線譜が主です。
日本など一部の地域の伝統音楽では五線譜以外の記譜法が散見されますが、五線譜の模倣のような気もします。
現代でも主流である五線譜は音楽流通のために非常に優れたものですが、過信しすぎると可能性を狭めてしまいます。
20世紀から21世紀にかけて創造された新しい音楽の多くは五線譜を拒否しているからです。
私のフェイバリット・ミュージックであるビバップ・ジャズも、譜面は見ないことによってサウンドを安定させる経過音やアプローチノート、代理和音、メロディックリズム、ハーモニックリズム、ブルーノートなど様々な理論を発展させたと考えています。
3、五線譜が支配する音楽
ただ、いかに机上の正論をまくしたてたとしても、すでに作曲された大量の音楽は否定できません。
「ピアノ白鍵理論」によって造られた無数の曲こそが人類の大きな遺産ともいえるのです。
五線譜とピアノの白鍵に注目して7音階を解読すると、大筋では次のようになります。
Cイオニアンスケール ドレミファソラシ
Dドリアンスケール レミファソラシド
Eフリージアンスケール ミファソラシドレ
Fリディアンスケール ファソラシドレミ
Gミクソリディアンスケール ソラシドレミファ
Aエオリアンスケール ラシドレミファソ
Bロクリアンスケール シドレミファソラ
Cドリアン△7thスケール ドレミ♭ファソラシ
Dドリアン♭2スケール レミ♭ファソラシド
E♭リディアン♯5スケール ミ♭ファソラシドレ
Fリディアン7thスケール ファソラシドレミ♭
Gミクソリディアン♭6スケール ソラシドレミ♭ファ
Aロクリアン♯2スケール ラシドレミ♭ファソ
Bオルタード7thスケール シドレミ♭ファソラ
一気にややこしくなりましたが、多くの人が基本だと思っている音楽理論がこれなのです。
さらに
Cエオリアン△7thスケール ドレミ♭ファソラ♭シ
Cイオニアン♭6thスケール ドレミファソラ♭シ
前者は通称「ハーモニックマイナースケール」
後者は通称「ハーモニックメジャースケール」
それぞれに展開形があります。
これは、スケール理論としては微妙ですが3度堆積によってコード理論を発展させました。
セカンダリードミナントや減5度のトニックシステムがすべてこのダイアトニックコード理論に収まったのですから大したものです。
七音階音楽世界もなかなかのものだという理屈も大量の理論書のバックアップもあり馬鹿にできないものでした。
4、五線譜上なら万能でも楽器上では厄介者
パソコンの一般化以前は作曲家の大部分は五線譜上で作曲していましたので、常に7音階は意識していました。
7音階は操作することによって無尽蔵のメロディを作る可能性を持っていたのです。
五線譜を使用しない作曲家の場合はどうでしょうか?
主に歌手とギタリスト、ジャズ系の管楽器ですが、やはり7音階とは呼べない音列が多いようです。
特にインプロヴィゼーションへの7音階の使用は危険性をはらみます。
常にメロディやハーモニーを意識していないと、意図せずサウンドが変化してしまうのです。
ビバップ・ジャズからの脱出? サウンドの変化を気にしない?
あまり良くない意味でのフリーミュージックが出来上がります。
アバンギャルドとか異次元空間サウンドならいいのですが、方向性が定まらないフリーミュージックはリスナーが拒否します。
7音階だけでアドリブするということは、アドリブが作曲になると言うことです。
良さそうに聞こえる言葉ですが、単にメロディーの部分が伸びただけです。
考え方がずれてます。
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5、メロディの可能性
12種類あるスケールの中から7音階だけ取り出しても、これだけの音楽を作り出した人類ですから、他の音階も基本からずれることによって想像もできない音楽を作り出す可能性があるのではないか?
そう信じたいですね。
6、ダイアトニック・スケールの練習法
サウンドが裏返らないようにハーモニックな練習が理想だと思います。
そうなると、ほとんどのスケール教本を否定してしまいますね。
7音で固定してコードトーンを小節数で制御する練習法もあります。
7音にこだわると言うことは結構厄介だと思います。
7、最後に
上記の7音スケールを12keyで楽器の全音域で練習することは大変な時間がかかります。
読譜の訓練としては避けては通れない道ですが、音楽することのマイナスにならないようにコントロールしたほうが結果的にはいいような気がします。
無駄な練習など無いと言う人も居ますが、無駄な時間はあったりするのです。
個人的に7音階絶対主義は嫌いなので否定的な意見が多くなってしまいましたが、重要なスケール理論であることは間違いないです。
どのスケール練習でも耳を鍛えることを第一に考えれば未来は明るいと思います。