デビッド・ギルモア 冷静に狂気と神秘を見たギタリスト
イギリスのレジェンド級ロックバンド「ピンクフロイド」は1965年に結成されたそうです。
当初のメンバーではありませんが、シンガーソングライターで優れたギタリストであったシド・バレットを中心にブルースロックからサイケデリックロックへと変わっていきます。
ピンクフロイドは1967年に「アーノルドレーン」でデビュー、2枚目の「シーエミリープレイ」もヒットしました。
どちらも「エコーズ~啓示」に入っていますのでシドに興味がある人は聴いてみてください。
しかし、デビューアルバム「夜明けの口笛吹き」発売直後からシド・バレットの体調が悪化し、セカンドギタリストとして雇われたのがデビッド・ギルモアでした。
二人ともレベルが高いです。
セカンドアルバム「神秘」録音中にシドは音楽活動不能の状態に陥り、急きょ
デビッド・ギルモアを中心にインスト曲「神秘」が録音されその後のピンクフロイド
の音楽性を決定づけたのです。
その後、「モア」と「ウマグマ」で試行錯誤の後、ロックシンフォニーの傑作「原子心母」の録音となります。
LPの片面一曲の「原子心母」は前年に発表された「クリムゾンキングの宮殿」と並ぶプログレッシブロックの傑作として一躍、新時代の旗手と注目される名曲です。
デビッド・ギルモアのギターソロも長時間に及び、メロディックなチョーキングギターは他には聞かれないものです。
Pink Floyd - Atom Heart Mother Suite
そして、デビット・ギルモアの実力を知らしめた1971年の次作「おせっかい」がリリースされます。
片面を埋め尽くす一曲「エコーズ」はリック・ライトの歌とデビット・ギルモアのギターが幻想的に重なり、神秘なる森へといざなうロック史上の名曲となります。
スローな泣きのギターから躍動感のあるファンキーサウンド、そしてシンフォニックな空中浮揚とすべてが神秘的なパーフェクトサウンドでした。
Pink Floyd - Atom Heart Mother Suite
続く作品は、ベースのロジャー・ウォータースを中心に作られたプログレッシブロックの最高峰の作品「狂気」です。
まあ、個人的には他の作品のほうが好きなんですが、当時の音楽記録を塗り替えるロングセラーがアンダーグラウンド音楽から出たのは衝撃的ですね。
「炎~あなたがここにいてほしい」「アニマルズ」「ウォール」、いずれもロジャー・ウォータースを中心とした、政治思想的色合いが濃い作品です。
特に問題はなく、デビッド・ギルモアのギターは冴えまくりますし、いずれも必聴の名作です。
Shine On You Crazy Diamond (Full Length: Parts I - IX) - Pink Floyd
ギルモアのソロは短い作品ですと起承転結がはっきりとした見事なスペースを描きます。
原子心母やエコーズ、狂ったダイアモンド、などの長尺の曲では場面によって泣きであったりエキサイティングであったり、誌的であったりと優れた構造性を見せてくれます。
多用されるチョーキングのメロディックで見事な音程が特徴的です。
ボトルネックやアーミング、アコギの技術も高レベルです。
ピンクフロイドの音楽性の半分近くはデビット・ギルモアの創造力にあると私は力説します。
Pink Floyd: Play Along with 9 Great-Sounding Tracks (Ultimate Guitar Play-along)
Pink Floyd Classics: Includes Downloadable Audio (Guitar Play-Along)
その後のピンクフロイドはロジャー・ウォータースと他メンバーに溝が出来て分解してしまいますが、80年代になってからデビッド・ギルモアを中心に再結成して、「鬱」と「対」というスタジオ作といくつかのライブ盤を発表します。
2008年、キーボードのリック・ライト死亡によりピンクフロイドは終焉となります。
上に挙げた作品以外にもピンクフロイド名義のアルバムはありますが、いずれも一人をフューチャーしたソロ作品的です。
この記事のタイトルは「デビッド・ギルモア」ですので、彼のソロアルバムやギルモア参加のピンクフロイド作品はどれも重要ですが、やはり思い入れの強い作品は次の6作品です。
「原子心母」
「おせっかい」
「狂気」
「炎~あなたがここにいてほしい」
「アニマルズ」
「ウォール」
特に「エコーズ」と「狂ったダイアモンド」の長いソロは非の打ちどころがありません。
「エコーズ~啓示」には大体入っていますし、シドバレットの初期作品も聴けますので、初めての人がレンタル等で聞く分には最良だと思います。
ただ、上の6作品は出来ればアルバムで聞いて欲しいですね。
本物の「狂気と神秘」はアルバムでなければ堪能できません。
デビッド・ギルモアですが、意外に現代でも人気は衰えていないようです。
年齢の割に元気ですし、創作意欲も衰えていないようです。
ギタリストとしてのレベルは高いですし、音楽を作ると言う姿勢はデビュー当時から変わっていません。
アングラ音楽がここまで世界的に支持された例は他にはないと思います。
ギターソロはスローなものが多く、練習次第では確実に弾けることから海外の若手ギタリストの登竜門の一つとなっています。
日本ではそこまでの人気はありませんが、難しすぎるギタリストよりはギルモアのメロディックなソロに取り組んだ方が得るものは多いと思います。
センスは変態じみたところはなく、いたって優等生的です。
そこがロジャー・ウォータースの変態的思想と最高にマッチして美しい音楽空間を創り出していました。
ロックギタリストならメロディックなギターソロも重要でしょう。
音楽ファンには有名でもギター弾きには忘れられた感もあるギタリストですが、若い人やメタル系やフュージョン系のテクニック志向の人も、ちょっと気分転換的に取り組んで見れば良い発見がある優良ギタリストだと思います。
高レベルギタリストながら、音楽性を最も重視した音楽史に残るギタリストだと言うことは間違いないと思います。