エドワード・ヴァン・ヘイレン 実はコードワークの革命
音楽一家に生まれたロックンロール大好き兄弟にありがちな流れとして、兄のアレックスがギター、弟のエディがドラムと言う担当だったそうです。
ジョニーウィンターやデュアンオールマンも兄でしたね。
ところが、アレックスはドラムのほうが面白くなり交代、エディは言われるままにギターに転向と言うことだそうです。
リアルなギター少年のストーリーが想像できます。
意外なことにバンド名は、高校のバンド仲間のヴォーカル担当のデビッド・リー・ロス
が付けたそうです。
ギタリスト「エドワード・ヴァン・ヘイレン」は1955年生まれ、ロックバンド「ヴァン・ヘイレン」の正式デビューは1978年なので23歳ですね。
思ってたより遅い、というか10代で注目される時代はとっくに終わっていたのかもしれません。
同期のスティーブ・ルカサーは1957年生まれで20歳ころに注目を浴びました。
ニール・ショーンは1954年生まれ、10代でサンタナバンドで注目されています。
ヴァン・ヘイレンのデビューアルバム邦題「炎の導火線」は曲も演奏も当時の常識を超えたものでした。
一曲目に持ってきた「悪魔のハイウェイ」に本当の革命が隠されていたとは当時は気が付きませんでしたね。
2、3曲目では、当時「ライトハンド奏法」と呼ばれた右手の人差し指での3連トリルが盛り込まれエレクトリックギター奏法の革新と騒がれました。
この奏法ですが、右手の人差し指を使用したハーモニクスは非常に古く、19世紀のクラシックギターからありました。
ジャズギタリストもタルファーロウやバーニーケッセルなど右手でフレットを押さえる方法は一般的でした。
ディストーションの一般化によりトリルの減衰が無くなり、長時間にわたるトリルに右手指を加えるという方法はジミヘンやデュアンオールマンなども使用していました。
チョーキングの上に右手指タッピングはラリーカールトンが得意でした。
ただ、どれもそれほどの効果があったわけでもなく、知られざる奏法という感じでしたが、エディの強烈な使用はギター奏法のセンセーションに十分なインパクトがあったと思います。
ところが「炎の導火線」での使用は意外に少ないのです。
本人もそれほどの必殺技とは思っていなかったのではないでしょうか。
ヴァンヘイレン モンスターロック 貴重映像!! vanhalen in monster rock!!
それはそれで凄かったのですが、当時子供だった私は(実際は1、2同時に聞いた)歌のバックで流れるヘヴィーなコードリフに驚いたのです。
なので、最も衝撃的だったのはトップの「悪魔のハイウェイ」です。
ソロの出来はまちまちでしたが、どの曲の伴奏もヘヴィーロックとしては完璧と言えるものです。
今聞いてもそう思いますが、当時のハードロックのレベルからすれば驚くべきものでした。
例えば、レッド・ツェッペリンのロックンロールの伴奏でG→Aは問題ないんですが、C→Dとフォームが変わることに違和感を感じませんか?
エディは極力違和感を感じないフォームを平行移動することによって、ギターの宿命であるホンキートンク平均律(どうやっても音が合わない)を抑え込んだのです。
完全にできるはずはありませんが、エディは現在まですべての曲の伴奏において音の濁りを減らすフォームの探求を忘れていません。
後にはスタインバーガーのアームでコードリフを狂い無く演奏する曲も造りました。
バズフェイントンチューニングシステムやスティーブヴァイの変なフレットのギターなどはエディの探求に追随するものだと思います。
ということで、ヴァンヘイレンの核であるエディのギターはデビットリーロスの伴奏としてうまく機能していたわけです。
ところが世間一般の期待はそれでは許されなかったわけですね。
ライトハンド3連トリルに続く必殺技を要求することになったのです。
普通のロックアルバムだった2と3(割と好き)で次第に評価が下がってきて、起死回生の作品が求められたのは当然の流れかもしれません。
1983年、エディはマイケル・ジャクソンのスリラーの一曲「ビートイット」にゲスト参加し、その実力を発揮したのです。
Michael Jackson - Beat It (Official Video)
忘れられようとしていたヴァン・ヘイレンはがぜん注目を浴び、1984年の「1984年」からのシングル「ジャンプ」は大ヒットを記録しました。
2枚目以降、どうもあか抜けないロックバンドだったヴァン・ヘイレンは一気にトップロックバンドに躍り出たと言っていいでしょう。
それほど可能性は無いと思われつつあったライトハンド奏法は「ジャンプ」により無限の可能性を提示されました。
呼び名も「タッピング奏法」と変わり、アランホールズワースやスティーブヴァイやジェフワトソンらにより新しい使用法が探求されていきました。
ジェフワトソンのエイトフィンガー奏法は1983年なのでジャンプより前、エディも相当焦ったのでは無いかと想像します。
Van Halen 1978-1984 (Hal Leonard Guitar Play-along)
新必殺技競争もヘヴィメタルのハイテク奏法に押されて下火になり、ヴァン・ヘイレンと言うバンドは歌手を変えて80年代売れ線ロックバンドを目指すことになります。
サミー・ヘイガー時代は5150は日本でも大うけしましたが、その後はディブ待望論が強かったようです。
サミーの人気はアメリカではエディよりも上で、全作品初登場一位でしたが。
Van Halen 1986-1995 (Hal Leonard Guitar Play-along)
その後いろいろあって(笑)、現在はデビット・リー・ロスなんでしょうか?
いずれの歌手でも、少なくともバッキングのヘヴィーなコードワークは一聴の価値ありです。
時々聞けるロマンあふれるギターソロにもはっとさせられますし、現在でも価値あるギタリストの一人だと確信しています。
Van Halen Live - 1984 Tour - Full Concert - Montreal (BEST QUALITY)
個人的には子供のころに「炎の導火線」と「暗闇の爆撃機」を交互に聞いていた頃の幸せな想い出は大切なものです。
日本人はやっぱりエディが大好きと言うのを思い出させてくれたものがありました。
「とある魔術の禁書目録」「とある科学の超電磁砲」という連作アニメですが、だれが弾いているのか知りませんが、盛り上がるところで流れるギターがエディそっくりなのです。
超電磁砲では嬉しい「パナマぱくりリフ」に思わずニヤニヤが止まりませんでした。
日本人はアニメとロックが大好きな民族なのですね。
実は21世紀になって忘れていた「ヴァン・ヘイレン」を思い出させてくれたのもこの「とあるシリーズ」だったのです。
エディのコードサウンドにはまだまだたくさんの可能性が秘められています。
一度、炎の導火線から全部聴き直してみれば、ギター人生に革命が起こるかもしれませんよ。
エディさんも病気を克服して長生きして欲しいですね。
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The Ultimate Song Pages Van Halen: Complete, Guitar Tab