ラリー・カールトン チョークノートは渦を巻く
私がラリー・カールトンの名前を始めて意識したのは、クルセイダーズのアルバムからです。
70年前後のジャズロック時代のクルセイダーズは相当通好みの作品が多い印象ですが、今聞いてみるとその原因は若きギタリスト・ラリー・カールトンの時代を先取りした演奏が原因では?と思いました。
クルセイダーズは1961年にジャズクルセイダーズとしてデビューしていますが、この頃のラリーは13歳ですからたぶん関係ないでしょう。
ラリーは大学で音楽を専攻しジャズギターを学びますが、現在までオーソドックスジャズプレイと言えるものは残していません。
頑ななまでにオリジナルな音楽性を貫いているのですが、デビューの時点ですでにラリー・カールトンです。21~22歳ころでしょう。
マイナーレーベルの試作品を除くと、正式録音は1971年の「クルセイダーズ」と言ってもいいでしょう。
最初の3枚(LP2枚組)は黒人ギタリストデビッド・T・ウォーカーとの2ギターでしたが、ライブ盤「スクラッチ」からラリーが正式メンバーとしてクレジットされ、ピアノのジョーサンプルと共にバンドの花形となります。
他に2枚、マニア向けがあります。
私が中学生のころに効いたのは「サザンコンフォート」というLP2枚組の作品で、イージーリスニング調のジャズファンクです。
「ナイルの百合」という幻想的な曲で、初めて聞いたジャズ風ギターソロでした。
今でも大好きですし、聞くごとに新しい発見がある高度な作品です。
「チェインリアクション」ではさらにファンク風身になりますが、その次の「南から来た十字軍」(1976年)では、ファンクジャズを卒業し新しい音楽「フュージョン」に変化しています。
一曲目の「スパイラル」ではバンドの主導権がラリーになり、ほぼギターフュージョンと呼べるくらいのフューチャーです。
続く「旋風に舞う」ではさらにラリーが主導した演奏が目立ちますが、直後に正式脱退、自らのソロプロジェクトに向かうことになります。
この時期のラリー・カールトンを一言で言えば「歴史上もっとも偉大なスタジオギタリスト」でしょう。
特にスティーリーダンの「幻想の摩天楼」(1976)と「彩」(1977)はラリー無しでは完成できなかったと確信します。
「幻想の摩天楼」収録の「滅びゆく英雄」は「スパイラル」と並んでギタリスト必修の名演奏だと思うのですが、今は忘れられているようですね。
1978年に発表した邦題「夜の彷徨」はソロでのメジャーデビューアルバムになります。
30歳ですが、すでに名前は相当売れていましたので期待を寄せられていました。
フュージョン作品と言うよりは「ギター練習曲集」といった趣の作品です。
非常に高度な演奏が聴けると共に曲のクォリティも高く、40年経った現代でも本人はもとより世界中のギタリストの上級者向け練習曲と評価されています。
純粋に音楽としての価値も高く、ラリーのヴォーカル曲も高レベルです。
極端な話ですが、これ一枚だけでも一生ものの名盤中の名盤です。
ラリーは40年に渡り、休むことなく自分のスタイルを研ぎ澄まし続け、多くのアルバムやセッションワークを発表し続けます。
1988年には不幸な銃撃事件で大けがを負い歌手としての活動は不能になりますが、ギタリストとしてはさらに飛躍を続けます。
自己主張の少なそうな人柄で黙々と演奏を発表し続ける姿勢は、多くの後進達に共感を呼び、現在もライブ活動は好調です。
たぶん、私が最も多くライブを見たギタリストだと思います。
1980年に大きな期待の中で発表された「ストライクストゥワイス」はジェイ・グレイドンのプロデュースで新時代フュージョンサウンドを創り上げ、日本のフュージョン(通称ジャパフュー)の理想形となったようです。
ただ、ソロデビューが遅かったせいもあり、微妙に年代は乗り遅れ気味です。
デビュー作はヴァンヘイレンの「炎の導火線」と同じ年です。
ギタリストとして最も脂がのっていた20代をセッションワークやバンドメンとして過ごしたため、ソロ活動はラリー・カールトン第2期という位置づけにしたですね。
ボブジェームスのバンド「フォープレイ」の正式メンバーとしてスムースジャズに全力疾走となる1997年からが第3期でしょうか。
2010年にフォープレイ脱退と言うことで、現在は第4期。
でもスタイルは知る限りほとんど変わってはいません。
まるで「俺は生まれたときからラリー・カールトンなんだ」と言わんばかりです。
LEGEND PLAYER ラリーカールトン (レジェンド・プレイヤー)
ラリーのソロアルバムはライブを含めほとんど聞きましたし、現在も所有しています。
スタジオワークもほとんど聞いていると思います。
新作以外は探しても聴いていないのはなかなか見つからないくらいです。
ラリーカールトンの教則DVD これはお値打ち品です
Larry Carlton 1 [DVD] [Import]
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若いころは良くコピーしてましたし、335を持って「ラリーカールトンですね」と言われていましたが、遠い昔のようです。
それでも聞き続ける魅力があるのです。
ジャズしか演奏していない時期が長かったのですが、ラリーのアルバムだけは必ず手に入れて聞きました。
その真摯な演奏は姿勢を正して聴く価値があります。
成功していない録音もあるのですが、高い技術レベルでカバーしています。
ところで、海外のジャズギタリスト100という評論家が選ぶベストでラリー・カールトンは14位、パットマルティーノやジョージベンソンより上でした。
長髪イケメンのイメージ(30代ですが)のころからうって変わって最近はジャズギタリストっぽい外見になっていますが、演奏はほとんど変わっていませんね。
個人的にはすべての録音を徹底的に探して聴いたギタリストは、パット・マルティーノとラリー・カールトンだけです。
2人ともいつまでも元気で演奏を続けて欲しいと願っています。
当分は新品のコピー本は望めないでしょうか