ビバップ・スケール ハーモニックな8音スケール
皆さんはビバップスケールをどのくらい理解しているでしょうか。
音楽理論の中枢と言っても良い重要な事項であると思います。
この部分が無いとしたら従来の理論の多くは空論になってしまいます。
私の意見としては先に8音ありきで、経過音を除いて見やすくしたものがダイアトニックであると考えています。
1、ダイアトニック理論の不完全さ
ビバップスケールはダイアトニック理論と呼ばれているものの知識が必要です。
経過音が無いため目で理解しやすいためです。
メジャースケールの展開形として7つのモードが得られます。
1、Cイオニアン
2、Dドリアン
3、Eフリージアン
4、Fリディアン
5、Gミクソリディアン
6、Aエオリアン
7、Bロクリアン
全部同じですが、違うと仮定した場合次のようなことが起こります。
最初のモードであるCイオニアンを2オクターブ演奏したとします。
ドレミファソラシド レミファソラシドシ ラソファミレド
2小節目のサウンドは何でしょうか?
連譜なので気にならないかもしれませんが、気にし出すと止まりません。
C → Dm G7 → Am などというコードが聞こえてきたりもします。
昔の音楽理論書はこのような素朴な疑問を完全に無視していました。
2、ビバップスケールの成り立ち
多くの演奏家はダイアトニック理論に不信感を持ち、コード理論の基礎としてしか利用せず、インプロヴィゼーションではありがちなリックの連結に終始することになりました。
1940年代初頭にジャズミュージシャンたちは経過音を使用してサウンドを安定させる方法を使用し始めました。
ビバップジャズの時代でしたので、ビバップスケールと後に呼ばれることになります。
チャーリーパーカースタイルの研究/Cインストゥルメンツ(CD付) エッセンシャルジャズライン
7つのモードに対して、7度とルートのあいだ、または、5度と6度のあいだに経過音を挟みます。
以下のようになります。オクターブ上のルートを含むため9音あります。
1、Cイオニアン ドレミファソソ♯ラシド → 5度と6度のあいだ
2、Dドリアン レミファソラシドド♯レ → 7度とルートのあいだ
3、Eフリージアン ミファソラシドレレ♯ミ → 7度とルートのあいだ
4、Fリディアン ファソラシドド♯レミファ → 5度と6度のあいだ
5、Gミクソリディアン ソラシドレミファファ♯ソ→ 7度とルートのあいだ
6、Aエオリアン ラシドレミファソソ♯ラ → 7度とルートのあいだ
7、Bロクリアン シドレミファソララ♯シ → 7度とルートのあいだ
以上がビバップスケール(8音スケール)の考え方です。
Cイオニアンスケールを八分音符で何オクターブ演奏してもC6のサウンドですのですっきりします。
これはビバップスケールの入門書
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3、ビバップスケールの実践
歴史的には理論的完成より先に大量の録音物が出回ったと言う珍しい手法です。
もちろん、セッションにおいては5年くらい前に何度も試行錯誤された実戦的理論でした。
ビバップスケールには落とし穴もあります。
ビバップスケールのみの使用では音楽性が著しく損なわれるのです。
すべてのビバップスケールのモードを習得する前にミクソリディアンビバップスケールのみを練習し、実践してみることが理解に繋がります。
八分音符で演奏したくなる7thコードの部分で試すことから始めます。
Dm7 G7 → G7 と単純化することにより多くの場面で使用できます。
このスケールは拍のアタマにソシレファというコードトーンが来ますので非常にハーモニックなラインになります。
コードトーンからの上行、下行を練習することでハーモニックなラインが作れます。
コードトーン以外から始める場合は、新たな経過音を最も早い裏拍に挿入することによって速やかにビバップスケールに戻すように操作します。
(例 ララ♯シド レミファファ♯ ソラシ ~ 9thから開始し裏拍に経過音
経過音は裏拍に入れるのが基本です。
方向転換
(例 ソラシド レミレド ファ
方向転換によりコードトーンが裏になるようなら速やかに裏拍に経過音を入れて戻します。
音を飛ばす。変化を与えるために音を飛ばすことも可能です。
(例 ファファ♯ソミ ファファ♯ソラ シ
ラインを止めるためにインターバルを使うと有効です
(例 ソファ♯ファミ レドシラ ソレ (Cに解決する場合は、ソミまたはソド)
遅らせて解決する。違う理論ですがハーモニックなビバップスケールには非常に有効です
(例 ララ♭ソソ♭ ファミレド シラ♭ファファ♯ ソ
裏コードのビバップスケールを使用する。
応用編ですが、G7の裏コードD♭のリディアン7thビバップスケールが使用できます。
場面によりますがD♭でもミクソリディアンの使用例も多いようです。
こちらはイオニアンビバップスケールに特化
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4、トニックのビバップスケール
トニックコードにおいてもビバップスケールの使用例が目立ちます。
M7thの場合は5度と6度のあいだに経過音を入れて6thのサウンドを作ります。
解決した後の場合が多いので、インターバルを使った止めが重要です。
(例 ドシララ♭ ソミ または ファミレレ♭ ドソ
逆にドミナントに向かうトニックラインの作成にも役立ちます。
ハウ・ハイ・ザムーンの最初の4小節
G△7 → Gm7C7
レレ♯ミファ♯ ソラシド レドレレ♯ ミミ♭レド シ♭ラソファ ミ
4、まとめ
今回は初級編としてミクソリディアンビバップスケールとイオニアンビバップスケールに絞って解説しました。
今後、大量のビバップスケールが現れますが、使用法はこの応用になります。
この段階ではビバップ時代のサウンドの再現は出来ませんが、時間をかけて練習することにより、確実に身に着けて欲しい理論です。
次回は応用編となります。
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